うららかびより

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東京の朝は七度

毎朝降りて夜に乗る駅の前には丸井があり、屋上近くのデジタル表示が、時刻と気温を交互に表示させながら点滅している。朝にふと視線をあげると、七度だった。そういえば九時九分に九度だなんて、あほな日もあったっけな。寒くなるの早すぎ、あっけなさすぎ。一番好きなのは、暑くもなく寒くもなく、ワイシャツ一枚で歩き回れる時期なのに、そういうのは年々短くなっていく。たばこみたいに、いつかなくなってしまうんじゃないだろうか。
今日の出社時刻は9時過ぎ。退社時刻も9時過ぎ。残業代でくるりの新譜が買えると、前向きにとらえておこうか。今週はほかに平井堅のベストも余裕で買えちゃいそうなくらい、多分残業をするだろう。実際今日もまだやることはあったのだけれど、商品の入った袋をくずかごに落っことしたまま30分間気付かないというドジ属性を発動させたので、もう俺ダメ、マジ小物とあきらめを付けて帰って来た。1日祝日を含んでも、一週間の仕事量は変わらない。だからこんな週は意外と厳しい。
丸井の前を通る度に、見上げる癖がついているみたい。12時間後の気温は9度だった。夜なのに上がってるよ。こんなこともあるんだ。月は出ていないけど「ミスター・ムーンライト」を歌いたくなった。墨黒みたいな夜の空は、乳白色の雲を好かし模様のレースようにふわりとまといながらも、冴えてきりっとしている。丸くけだるい熱帯夜との、季節の隔たりを改めて思う。
アルディくん対ガンバボーイの出っ歯ダービーまで後少しと迫ったけれど、索敵も情報収集も攪乱もしていないままここまできちゃった。情報を求めてきた大宮サポーターの皆さん、残念でした。

とりあえず血中サッカー濃度だけはあげとこうと思って、電車に乗る前に「俺たちのフィールド」文庫版三巻と四巻を買った。

俺たちのフィールド (4) (小学館文庫)

俺たちのフィールド (4) (小学館文庫)

高校選手権編では、こういう試合運びは現実にはないよなあとか、タクローてばシンガードはおろか靴下も履いてないよ、やべーとか思うけど、決勝で和也が放つ最後のシュートには下瞼が湿り気を帯びるし、ダミアンが出てきてからの面白さは(そんなに意表を突く話の転がり方ではないのに)、初読の時と何ら変わりない。村枝賢一さんのマンガって、すごく人の良さがにじみ出ている。本腰を入れて読み手を楽しませてくれようとしているのが、わかる。このマンガも、描いていく内に段々と、サッカーとそれにまつわる営みに敬意が生まれて、作者の意識が変わっていき、それにしたがって物語自体も面白くなっていったんだった。反芻しながら、毎月読むのが楽しみになっている。長年観戦していく内に大きくなる、サッカーに対する固定観念やしがらみを、うまいことほぐしてくれるから。サッカーの主役は利権でも戦術でもなく、どこまでも人なのだ、というシンプルな事実に、立ち返ることができるから。ボールはいわば言葉であり、意志であり、他者との関わりそのものなのだ。転がり続ける意志がある限り、人はこのボールのように、どこにでもいけるのだ。
出っ歯ダービーの前には、サッカー意外でも色々と考えることはあり。例えば前倒しで出る三大美容雑誌(美的、VoCE、MAQUIA)はどれを買うべきかとか、ファッション誌はどうしよかとか(SPURの中吊り広告かわいい)。真冬に備えてどんな服を買い足すか(主に通勤用)、とか。クリスマスプレゼントはなにがいいかな、とか。

数年前からは考えられないくらい、軽い悩みばかりになったもんだ。それが幸せというやつかな。家に帰ってきてから、2時間も経ってないのに寝ないといけないのは残念だけど。
そうしてまた寝て起きて乗って、丸井を見上げるのだろう。明日も変わらずに。