うららかびより

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「少年メリケンサック」観に行ってきた(ネタバレは出来るだけなし)

大阪ダービーには行ってないしみても無くてよくわからず、負けたからには相手がセレッソだろうがお猿のかごやだろうが、いつでも悔しいんじゃい!ってわけでこの話題終了。お口直しに、昨日みた映画の話でも。
クドカン監督・脚本、宮崎あおい主演。そしてなにより、今回の御題は「パンク」ってことで、こりゃ観なきゃしゃーない!ってことで行ってまいりました。公開一週間後で興奮冷めやらぬ、渋谷TOEIに行ってみると、なんせすごい人。映画館から行列がはみ出していましたからね。しかしながら、そのほとんどが10代からせいぜい30代くらい。パンクをリアルタイムで経験している、メリケンサックと同年代の40代、50代の人たちの姿は見かけなかったなあ。そもそもこの辺の年頃の人は、クドカンを観ないのか?この映画の題材からして、むしろこの辺の人たちがぐっと来るんじゃないかなと思うんですけどね。
で、感想なんですが…いや、もう面白かったですよ!小ネタのジャブで思いっきり全身をくすぐられて痛快ながらも、それだけじゃない。物語が進むに連れて、体の幹の近くにある、根源的なものがじわりじわりと揺さぶられて行く。前作「真夜中の弥次さん喜多さん」は、少し毛色の違った幻想的な作品でシリアスでしたが、今回は「木更津キャッツアイ」の4人組がバカでも熱くてもすっ転んでジーパンのケツが破けてもでも生きて生きて生きまくっておっさんになったような、そんなかっこわるさといとおしさが有りました。
1983年の解散以来の再結成を果たした少年メリケンサックの面々は、おっさんだし演奏の腕はますます落ちているし、くさいしエロいし人の携帯は勝手に観るし、アキオさんはチャーハンと焼き飯の違いだけで激怒するし、ヤングさんは痔持ちだし、ハルオさんは元アイドルとは思えぬおっさん体型だし、屁の回数も増えて、車でぶっ放すたびに宮崎あおい演じる栗田かんなに怒られ、しまいにゃ1発500円の罰金を徴収されるようになります。でも、彼らは、降って湧いたような全国ツアーで打ちのめされるようなことがあっても、どっか行ったりしなかった。「自分らしく」なんてしゃらくさい言葉など使わなくとも、彼らは素っ裸のままでした。
ハッピープレイスやアナザーワールドにぶっ飛ぶのは気持ちよくてハッピッピーかもしれない。ただ、どんなに賃金下げられようと、貯金がなくとも、屁が臭くなっても、のたうち回るような苦痛があるのだとしても、今いる場所で、呼吸を止めずに生き続けること。これもまた反骨精神であり、ファッション化したパンクが1970年代に忘れてきた核であり、パンクが今の時代に生きる形なのかもしれません。計算くそくらえ。空気読んでる暇があったら、1回でも呼吸を多くして生きてみろ、と。生きることが、なんだか必要以上に複雑になってしまった今の私たちですが、突っ走ったその方向が、他人にはどうだろうと少なくともその人にとっては「前向き」になるってこと。なんで忘れちゃうんでしょうね。
冒頭で、mixiにアップされたメリケンサックの動画を観たかんなが、「パンクなんて好きじゃないけど、何か気になってしょうがない。何か引っかかる」と思うことから、この物語ははじまります。思い起こしてみると、こう思う機会って少なくなりました。音楽にしろ、映画にしろ、スポーツにしろ、ジャンルが小さなシマとして細分化されたぶん、簡単に「好きな物に囲まれるしあわせ(はぁと)」は味わえるようにはなりました。ただ、逆にシマ以外のことはよくわからないようになっちゃったし、シマの壁を乗り越えて心に届く物も、少なくなってきている気がします。精々、別のシマを自分たちのシマの格を上げるための批判対象にするくらい。シマ自体はだんだん小さく、小粒にまとまりつつある気がします。かんなは、「嫌いだけどひっかかる」ものに食らいついて、今まで目を背けていたことや自分の中の気づかなかった部分を観ました。それは彼女が、タフで運がある人だったからたどり着いた結果だろうけど、食わず嫌いせず結果的にはいい出会いを引き寄せたのがすごくいいなと思いました。
文章のつたない私はこの程度しか書けんのですが、パンフレットにクドカンが書いてるあとがきのような文章がこれまた秀逸で。やっぱりこの人は信用できる人だと改めて思いました。映画館で見終わった後、まだじんわりとした感動で体がほてっているうちにどうぞお読みください。700円の価値は絶対有るから。
登場人物の中では、三宅弘城演じるヤングさんが、なんかかわいらしかったなー。一番年下(でも42歳)なのに、気遣い方がバンドのお父さんみたいでね(笑)。なにより、おでこの傷がなんとも(笑)。田口トモロヲ演じるジミーさんは…おいしい(笑)。どこのバンドもボーカルがいちばんどうしようもないんですね(褒め言葉)。でも峯田の顔が田口トモロヲになる過程が想像できない。銀杏BOYZは…キモカワイイ役柄でした(笑)。佐藤浩市演じるアキオさんには、最初「佐藤浩市があんなことを!おおおおおお!」「いいのか!?いいのかしら!でもなんか面白い!」とやること成すことに必要以上にドキドキしていたのですが、じきに「アキオさんだから仕方ない…」と思えるようになりました(笑)。これはいいことなのかよくわかんないけど(笑)。爛れたダメ中年なんつう、滅多に演じない役柄でしたけど、やっぱかっこよかった。若いときのアキオさんを演じてたのが、どっかでみたこと有るなーと思ってたら、「仮面ライダーカブト」に出ていた佐藤智仁でこれもまたびっくり。キムにい演じるハルオは、感情を表に表さないけどその実複雑、「この人はあまり手札をみせないんだけどなんか信用できる。でも怒らせたら絶対ダメ」というキャラで。しかし…あんな歌詞を書くかー(笑)。いやいや、びびりました。若い頃のハルオさんは、波岡一喜が演じてました。脇が多いのだけど、うまい役者さん。テレビよりも映画に出てるときの方が、好きだなあ。「パッチギ」のモトキ役とか、よく覚えてます。あとは瀧。うさんくさすぎる(笑)。それからTELYA役の田辺誠一…いやあもう、途中までほんもののガックンかと思ってました(笑)。すごいよ田辺誠一。大塚寧々は見る目有るよ。しかも「アンドロメダおまえ」の作曲、向井(笑)。これには盛大に噴いた。
あとは、アナーキーの仲野茂さんとか、THE STAR CLUBのHIKAGEさんとか、遠藤ミチロウさんといった、私でも知ってるくらいどでかい、ジャパニーズ・パンクの生ける伝説な皆さん、そしてSAKEROCKの諸君(ジェネレーションオブアニメーションって思いっきりアジカンだったなあ。アジカンも好きだけど)とか、普段音楽に親しんでる人間にはにやりとする顔もちょこちょこと観られました。にっこり。
あと、これはごく個人的な思いなんですけど…ライブハウスのシーンをみていたら、学生の時分を思い出しましたね。替えのTシャツとタオルを持って、出来るだけ荷物をコンパクトにして、500円のチャージ料ウゼエ、と思いながら小銭を払ってビール飲んで、踊って踊って汗だくになって1キロくらいやせて(まあ、すぐ戻っちゃうんだけど)ニヤニヤしながらへろへろの体を引きずって北関東まで帰ってた日々。バカをやってあの頃仲良くしていた子たちのほとんどとは喧嘩別れか音信不通です。でもそれでもやっぱり、いい思い出なのです。若いうちに背面ダイブとか、やりたかったなあー。
とにもかくにも、素敵映画でしたよってことで。

おまけ:これから観たい映画

 先にフィッツジェラルドの原作を読みましたが、SFチックでちょっとだけほろ苦く、でも面白かった。これをどう現代的に味付けするのか。

 ガイ・リッチーの新作。「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」も「スナッチ」も「リボルバー」も観ていない私ですが、予告編のスタイリッシュさと英国産アクション・コメディというので惹かれています。恵比寿と大阪のガーデンシネマしか上映してないようですね。

なんと237分もの大作!長過ぎて上映中に一旦休憩が入るとのこと。それだけでなんか、無性にワクワクするけど人を誘いづらい(笑)。仕事帰りに行ったら帰れなくなってしまうくらいの長さ。はてさて。