うららかびより

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第86回高校サッカー選手権大会決勝戦:藤枝東対流通経済大柏


今年初めて、ひとりでぷらっといってきました。単に友人が少ないというのもあるのですが、ただひたすらに目の前の試合、そしてサッカーそのものに没頭して、お腹一杯になって帰るのも、たまにはいいものです。高校サッカー選手権の決勝戦というのは、その点私にとってちょっと特別な試合です。理由はなくとも、ひとりで浸りたくなるんですわ。
すでに報じられている通り、4−0という予想を上回る差をつけて、流通経済大柏が勝利。夏の高円宮杯(U-18)に続いての全国大会制覇となりました。試合のポイントとなったのは、先制点。お互いに若干薄めの右サイドを突くところから始まったのですが、まず目に付いたのは藤枝東が細かくパスをつないでから、自陣左サイドより走りこんだ選手にパスを出し、ワンツーから攻めていくのに対して、流通経済大柏は大きなサイドチェンジを織り交ぜて、サイドの選手のドリブル突破に任す、と…どこぞの公園内の競技場でよくある光景のようでした。藤枝東は、U-18日本代表候補の河井が中心。しょっぱなから惜しみなく動きまくっては、パスで味方を動かしてゆきます。流通経済大柏はというと、初戦に重傷を負って、長らくベンチから外れていたFW上條が復帰。それによって大前は、サイドに流れてためをつくってかき回す動きに専念できるようになり、負担は軽くなったように見えました。左サイドからは、8番の村瀬が元気良く前線に顔を見せていました。
このまま拮抗した展開になるかなあと思ったら、意外な展開。先制はなんと前半6分。大前が相手左サイドで驚異的な粘りを見せ、中央にパス。そこを村瀬が詰めて先制。なんとまあ、あっけない。中央のDFは大前に釣られて、村瀬はドフリーでした。ただ、出会いがしらの事故みたいな失点ですし、まだそれほどあわてる必要はない。傍から見てるとそういう風に見えたんですが…残念なことに、藤枝東イレブンはそこでテンパッてしまいます。予想外の展開に、よほど面食らったのか、縦パス1本で雑に攻めることが多くなり、
ボールがちゃんと足につかなくなってしまいました。もともとフィジカルで優位に立ち、珠際に強い流通経済大柏の選手たちに簡単にボールを奪われることになり、自分たちのサッカーを充分に出来ないまま、前半を終えることに。かたや流通経済大柏は、実に余裕。大前は足首のひねり一つで何万もの観衆のため息を誘い続けました。つか、大前以外もみんな、うまい。普通に。
藤枝東はもともと前線からグリグリプレッシングをかける感じではないのですが、このようにチームがシュンとしてしまうと、本当に辛い。こういうときこそ、本来の自分たちの姿を見失わないで欲しかったのですが…若さという言葉で片付けるには、残念な展開でした。やられっぱなしではなく、河井が前線で動き回って孤軍奮闘し、GK木村の好セーブも光りました(彼が防がなかったら前半から流通経済大ショーになってゲームは壊れていたでしょう)。しかし流通経済大柏の守備はみっちりと組織立っていて、河井がこれまで見せてきたすばらしいひらめきをもってしてもやすやすと崩しきれるものではありませんでした。流通経済大柏は、鹿島から特有の狡猾さと審判への猛抗…えへんえへん、勝負に対するあくなき執念を若干抜いてまろやかにミルクを加えたようなチーム。私はここで、デジャブのような感覚に教われました。このような展開の、赤と紫のチームのぶつかり合いを、私はすでに元旦で見ていました。天皇杯決勝戦、鹿島対広島。
後半、立ち上がりから藤枝東は本来のスタイルを取り戻し、スピーディなパス回しからシュートで終わるいい流れを作り出します。ハーフタイムに服部監督のお言葉があったのでしょう。これは後半、道転ぶかわからない…と思っていたんですが。大前元紀、無邪気な顔してやってくれます。ペナルティエリア前からの細かいパス交換から、気がついたらゴールしてたー!私は藤枝東側のゴール裏におり、それが決まったゴールとは反対側にいたんですが、いやあもう、分けわかんないくらい早かったです。リプレイで観て、ようやくわかったくらい。このチーム、高円宮杯(U-18)のときははずかしながらノーチェックで、東福岡との準々決勝で初めてみたんです。そのときはクライマックスがPK戦みたいな枯れたつぶしあいをしてましてね。この次大丈夫かよって思ってたところ、準決勝では上條に加えて比嘉を欠きながら6−0の大劇場!これでスイッチが入ったんじゃないかと勝手に思っています。藤枝東にとっては、さあこれからって時にまたしてもあごにアッパーカットを食らって頭がクラリ。前半のリプレイみたいな展開でした。
その後は、見ごたえのあるせめぎあいが続きます。結果流通経済大柏が2点を加えて4−0としたのですけど、点差ほどの絶対的な差は感じませんでした。ただ、(1)出足の速さ(2)珠際の強さ、そして(3)得点のタイミング。この3点において流通経済大柏が上回ったのが大きな差となりました。逆に、出会いがしらの一撃で、自分たちの力を発揮できない時間帯を長く作ってしまった藤枝東にとっては、悔やまれる90分となってしまいました。藤枝東の服部監督は、こうおっしゃったそうです。「藤枝のサッカー、曲げて勝つなら曲げないで負けろ」と。思えばガンバも、2年連続この問題に直面して、砕けてしまったんでした。服部監督の言葉は、間違っているとは思いませんが、以下に自分たちのサッカーを表現するか、出来ないときはどうするか。藤枝東とガンバは、わりかし傾向が似ていると感じましたし、だからこそ藤枝東の負け方はらしいというか、憎めないというか。甘いんでしょうかね。でも、試合終了のホイッスルが鳴ってから、ピッチにいた人間の半分以上がばったりと地面に倒れ付すほどの熱闘。間違っていたなんて、いえません。
いいものを見せてもらったと思います。ありがとう。

追記

試合後、なんだかむずむずしちゃって本屋に走って、これを買いました。これから次の生観戦まで1ヶ月以上空くなんて、信じられません。でもまあ…そのぶんお金でも貯めますか(笑)。この年になって人に言える額ほどの貯金がないっつうのもねえ。なんだかねえ。