何を見てもあの子を思い出す
ついこの間まで黒とオレンジと紫に彩られていた街中が、もう素知らぬ顔で緑と赤に衣替えされてしまった。赤ちゃん連れの家族を見ても寂しくなったり妬ましくなったりはしない。よそはよそ、うちはうちだ。
去年の今頃は、ピーくんとともにクリスマスを過ごすことを目標に、がむしゃらに行動していた。来年は家族全員そろって家でクリスマスを過ごすのだと、近所のショッピングセンターに毎年立てられる、立派なクリスマスツリーを皆で観るのだと。そう信じていた。なのに今はもう、傍らにちっちゃなこぐまちゃんみたいなかわいい息子がいないことに、寂しくなり胸が痛む。クリスマスのどんなものを見ても、ピーくんを思い出すのだ。
今までピーくんが生きていたら、毎日医療ケアで寝不足の毎日を過ごしていただろうか?私は職を失っていただろうか?それでも、一日でも長く、一緒に生きていたかった。長く生きるほどに、楽しい思いをする機会も増えたはずだから。君はみんなを悲しませるために生まれてきたわけじゃない。充分な喜びをくれたのだから、少しでもそれに報いたかったよ。
今頃はお空でどうしているかな。クリスマスには、ケーキを食べに帰っておいで。なんて、離れて暮らす大学生のカーチャンみたいなことを考えるのだった。